2003~2020年度の川崎医科大学衛生学の記録 ➡ その後はウェブ版「雲心月性」です。
川崎医科大学 研究ニュース No.74. 
2009年9月
第18回日本臨床環境医学会学術集会を終えて
平成21年7月3日~4日に岡山市北区柳町の山陽新聞本社ビル内のさん太ホールにて第18回日本臨床環境医学会学術集会を開催いたしました。

この学会は,臨床環境と銘打っておりますが,元来シックハウス症候群(SHS)や化学物質過敏症(CS)などの疾病に関連して,その病態を明らかにして対応を模索することで始まった学会で,北里研究所病院臨床環境医学センター長をお務めでいらした石川哲先生が初代理事長になられて発足し,このような疾患群の病態治療研究の中心となっている学会です。

私も衛生学~環境医学に携わっていることもあって6年ほど前からSHSやCSの勉強のために参加しておりました。

また,SHSやCSが中心とは云っても環境から惹起される健康障害について広く演題も募集している会ですので,私たちの教室が行っている珪酸やアスベストの免疫影響の中で,ヒト検体を用いた成果などを発表させてもらっておりました。

最近になって,3代目理事長に北里大学衛生学公衆衛生学教授の相澤先生が就任されたことなどもあって,2年前に今年度の学術集会の会長をするようにと申しつけられ準備をしておりました。

今回はテーマを「創造―笑顔の未来へ―」としました,が,これはポスターに笑顔の少女の写真を掲載することを決めてからテーマを考えるといった裏話でもありました。
ただ,今回会期中の事例セッションという患者さんやその支援団体のNPOの方々の発表や,一般演題でも子どものSHSやCSの演題などを拝聴していて,そしてコメントをされていた顧問であり小児神経内科ご専門の瀬川昌也先生のお話などを聞いていると,まさにSHSやCSについても笑顔の未来へ向けた研究や臨床的な更には社会的な活動を進めていかなければならないことが明白になり良いテーマに出来たと嬉しく思いました。

特別講演には佐賀大学医学部の出原賢治先生(アレルギー学),そしてシンポジウムには本学解剖学の樋田一徳先生(環境のセンサーとしての嗅覚),国立精神神経センターの安藤哲也先生(摂食障害について),徳島大学の六反一仁先生(ストレス科学としてのDNAチップ)をお招きしました。

SHSやCSが精神-神経-内分泌-免疫ネットワークの破綻であろうということが考えられておりますので,今回はそれぞれの専門領域の先生方から最先端のお話を聴かせて頂いて,今度はそれを統括的にテーマとする疾病群の研究者たちが如何に応用するかを考える機会にしようと考えたからです。

御蔭様でどの企画も好評で会員の先生方には十分ご満足いただけたのではないかと思っております。

これらの企画と同様に前述の事例セッションはご参集の先生方に強く受け入れていただきました。

岐阜県白川町の病院長の先生からの隣接して操業した化学工場による公害事例,電磁波過敏症については患者さんを支援する熊本市のNPOの方や,札幌の方による兵庫県川西市の事例,そしてSHS/CSについては滋賀や福岡のNPOの方々からの切実なご発表があり,それらは科学的な調査という視点からは足りないものがあるのかも知れませんが,それを凌駕する疾病で苦しまれている人達の生の声や対応の困難さなどの切々とした訴えがすべての聴衆の方々にダイレクトに伝わってきました。

改めてこのような研究領域に携わっている者はこの原点を見失う訳には行かない,ともすれば研究のための業績のための研究に陥りやすい研究職が,やはりこういった声に正面から対峙する機会を持たなければならないということを強烈な印象とともに心に刻みこむことが出来ました。

こういった場面を設けることが出来たことだけでも今回の学術集会を開催して良かったと思いました。

ちなみに招聘させていただいた先生方や座長をして下さった先生方には学術集会記念Tシャツを配布し,ついでにその他の方々には販売もしましたが売れ行きも好調で,更には懇親会では会長自らの曲紹介! 

自主制作CDの売れ行きも好調でした。

参加してくださった皆様,スタッフとしてご尽力いただいた皆様,すべての関係して下さった皆様に感謝を込めて,稿を終えさせていただきます。

本当にありがとうございました。
詳細は学術集会HPまた,学会自体HPをご参照ください。来年は東京で行われます。

ご興味を持たれてらっしゃる方々は,ぜひ大槻(takemi@med.kawasaki-m.ac.jp)までお尋ねください。